この国の名前ついて (2)

韓国の「新羅本紀」には「670年倭国が国号を日本と改めた」と記載されている。
670年頃と言えば奈良時代と言ってもいいだろう。
厳密には近江に都があり天智天皇の御世であり、法隆寺が全焼した年でもある。
奈良平城京が完成したのは710年だ。
ではこの当時、「日本」をどのように発音していたのだろうか。

「本」の字は呉音でも漢音でも「ホン」である。
が、この時代「は行」の音には諸説ある。
一つはF音というもので「ファ、フィ、フ、フェ、フォ」というような,
両唇摩擦音で発音したのではないかというものである。
この場合日本は「ニッフォン」と発音したことになる。

もう一つはP音ではないかというもので「パ、ピ、プ、ペ、ポ」という破裂音で、
この場合は「ニッポン」となる。
どちらが正しいか現時点では不明である。

ただ、僕は思うんだが、「ニッフォン」と発音するか「ニッポン」と発音するか、
どちらが発音しやすいかと言うと、そりゃ「ニッポン」である。
ま、当時の人が「ニッフォン」だって発音しやすいと言われればそうだけど、
僕は「ニッポン」だな。

F音がH音に変わって初めて「ニホン」という読み方が現れた気がする。
この変化は近世・江戸時代だ。
江戸時代に関東方面で日本を「にほん」という読み方が流行し、
江戸(東京)は「日本橋(にほんばし)」と呼ばれるようになったが、
浪速(大阪)は昔のまま変化なく「日本橋(にっぽんばし)」と呼び続けたのではなかろうか。
江戸の人は粋に「にほん」と言ったんじゃなかろうか。
いずれにしろ幕末の時には、既に二つの呼び方があったことになる。

そして明治維新を迎える。
当時、薩長土肥の軍が勝海舟無血開城によって江戸に入った時、
江戸の人間と言葉が通じず苦労したということを聞いたことがある。
参勤交代をしているようなエリート官僚は国元と江戸を往復しているので、
どちらの言葉も分かるが、軍は百姓や下級武士などの田舎者で構成されていたので、
地方の言葉のまま大挙して江戸の町にやってきたのである。
これはどう考えても通じない。
そして、このような人材の中から政府中枢が構成されていくようになる。
すると「日本」はどのように発音するか。当然「にっぽん」である。

日本は、戦意高揚のため軟弱な「にほん」という呼び方を避けて「にっぽん」と呼んだ、
という事を聞いたことがあるが、後から付けた理由だろう。
もともと「にっぽん」という名前だけが日本全国で通じる言葉だったように思える。
言い方を換えれば田舎者同士でも通用するのは「にっぽん」だった。
だから新政府は、何ら考えることもなく、当たり前に「にっぽん」と呼んだのだ。
これが、江戸幕府が勝利していたなら、「にほん」という選択肢もあったかもしれない。
それから時間が流れ、大きな戦争をいくつか経験し現代に至っている。

でも今は両方読み方があるのが普通ということだ。あまり気にしない、気にしない。