セビリアのタパス


いろいろ珍しい食べ物があるものだ。
セビリアで宿泊していたホテルは旧市街の最も端にあり、
イスラム色の強いところである。
そのホテルの横に名もなきバルがある。

このバルが開店するのは、20時くらい。
店の前が公園なので、そこへテーブルと椅子を並べる。
もう客は待っていて、
飲み物と小皿を抱えて嬉々としてテーブルに向かう。
普通、屋外のテーブル席は、ウエイターが聞きに来て、
オーダー品を運ぶのだが、この店では、そんなことをしていたら、
何時になるか分からない。
客が皆、料理を運ぶのである。
テーブル席がなくなると、
客が店の奥からテーブルを運び出してくることもある。
そこまでして客が食べるのが、この写真のものである。

最初、ビールを飲みながら見ていたら、
やたらうまそうに皆んなが食べている。
客の9割はこれを注文している。
最初は巻貝の一種かなと思った。
大きさは1センチか、それ以下である。とても小さい。

店に入り、貝が欲しいと言うと、かたつむりだと言う。
料金は1.8ユーロ、260円くらいだ。
とても小さい。
どうやって食べるかといういうと、
かたつむりの身を噛んで吸い出すのである。
イスラム系の人も、欧米系の人も、皆んなチューチューと吸っている。
このかたつむりは、炊き込んであって、
味はカレーじゃないけれどカレーっぽい味である。
どんな味付け方法か皆目分からない。
この味が絶品である。
食べても、お腹がふくれることはない。
身と言ったてたかがしれている。
味、歯ごたえ、吸い出して食べる感覚…。
これが、なんとも言えない。

エスカルゴのようなかたつむり料理は経験があるが、
こんな小さなかたつむりは初めてだ。
たしか、パンプローナの街を出てしばらくの間は、
道はかたつむりだらけだった。
それも大きい。
うじゃうじゃいるので、踏み潰して歩くしかないような状況だった。
大きいのがいるということは、小さいのもいることになるが、
しかし、客は毎晩100人を超える。
これが皆が皆、この小さなかたつむりを食べるのである。
どこでこれだけのかたつむりを捕まえるのか不思議でならない。

しかし、世界は広い。
いろんな料理があるものである。
ちなみに宿泊していた間、毎晩ここに通いかたつむりを食べていた。
多分、200匹ぐらいは食べたのではなかろうか。