日本のワザ

今週は、訪日中国人の爆買いで話題となっている。
炊飯器は日本で買えばアフターフォローもないし、電圧の違いもある。
それでも価格がはるかに安いので買うのである。
彼等がなぜそのように買うのかというと、勿論品質と価格がバランスしているからであるが、
日本製品には職人のこだわりが感じられるという人もいる。

日本には「伝統工芸」には法律で決められた六つの基準がある。
1.特別な技術を必要とし、芸術的であること
2.主に日常生活の中で使われていること
3.主に手で作られていること
4.作り方の基本が江戸時代までに完成していること
5.原料・材料が木や土・石など自然のものであること
6.どこでも作られているものではなく、ある地方だけで作られる特別なものあること

これは、各種の物品を伝統工芸品と認定する際の基準だ。
「江戸時代までに完成」とあるから、この基準に合わせて新たに作る事は出来ない訳で、
既に存在している物の分類基準である。
逆に言うと、日本では昔から意識する・しないは別にして、
日常生活で使うものに対して特別な技術を加え、
芸術的にも価値の高いものを作ろうとしてきたと思われる。
では、なぜ日本人は、このような作り方をしてきたのだろうか。

ポルトガルから西洋の武器が、ほぼ同時期に日本と中国に伝えられたが、
中国では大砲に興味を示し、日本では鉄砲に関心が寄せられた。
鉄砲を分解し、複製を作り、そして射撃の腕を磨くのだが、
ここには「個人技」の集大成によって鉄砲が普及したように思える。
だが、中国ではそうならず、集団で扱う大砲の破壊力に興味がそそられたのだろう。
どちらが良いとか悪いとかでなく、関心のありようが違うということを言いたいのだ。

例えば、「弩(いしゆみ)」という弓を横にした武器があるが、
日本でも古墳の中から出土したりしているので、その存在は明らかなのに
日本では流行ることなく廃れてしまう。
一方、中国では戦国時代に斉の孫臏が使い、秦の始皇帝も使ったのだから古くからあり、
弩はその後も改良が続き、日清戦争にも中国兵が使ったとの記述がある。
弩は弓を引くのに力が要り、力の強い者ほど破壊力のある矢、遠くへ飛ぶ矢を放つことができる。だから、複数の人間で弓も引くこともあったようだ。

しかし、日本では「弩」ではなく「弓(ゆみ)」が好まれ、そして弓道まで生み出した。
弩のように力が大きなウエイトを占める武器に対して、日本人は単に力だけでなく、
「技」が好まれ、そしてその精神「道」まで究めようとした。

このようなモノに対してどのような視点で見るかが、中国と日本では昔から違いがある。
なぜ、このように違うのか僕には分からない。
このような歴史の根底に流れているものに対して、現代の中国人が、
現代の日本製品にも「技」を感じるのではなかろうか。